万葉植物 あさがほ
桔梗の花 桔梗の花 桔梗の花
基本情報
項目 | 内容 |
和歌中での植物名 | あさがほ |
和歌中での植物名表記 | 朝貌・朝杲・安佐我保 |
和名 | 桔梗 |
分類 | キキョウ科キキョウ属 |
学名 | Platycodon grandiflorus |
万葉集内登場回数(首) | 5 |
植物の特徴
桔梗は、日当たりの良い山野に自生するキキョウ科の多年草です。草丈は50〜100cmほどになり、夏から秋にかけて鮮やかな青紫色の花を咲かせます。開花前のつぼみは紙風船のように膨らむのが大きな特徴で、開花すると五裂した端正な星型の花冠が広がります。古くから観賞用として親しまれてきたほか、太い根は「桔梗根(キキョウコン)」という生薬として咳止めや鎮咳去痰に利用されてきました。
文化史・解説
『万葉集』に詠まれる「朝顔(あさがほ)」は、現代私たちが良く知るヒルガオ科のアサガオではなく、キキョウ科の「桔梗」を指すというのが通説です。古代において「朝顔」は「朝に美しく咲く花」の総称として用いられましたが、万葉の時代には主に桔梗がその代表とされていました。
特に著名なのが、山上臣憶良が詠んだ「秋の七草」の和歌です。萩、尾花、葛、撫子、女郎花、藤袴とともに「朝顔の花(桔梗)」が秋を代表する七つの花の一つとして挙げられています。万葉人たちは、朝露を受けて咲く桔梗の気品ある美しさや、鮮やかに咲き顕れる姿に情熱や秘めた恋心を重ね合わせ、数々の歌にその想いを託しました。
万葉集における和歌と現代語訳
巻8-1538 山上臣憶良 |
読み下し文 萩の花尾花葛花なでしこの花をみなへしまた藤袴朝顔の花〔その二〕 |
現代語訳 萩の花、尾花(ススキ)、葛の花、撫子の花、女郎花、そして藤袴、桔梗の花。 |
巻10-2104 作者未詳 |
読み下し文 朝顔は朝露負ひて咲くといへど夕影にこそ咲き増さりけれ |
現代語訳 桔梗は朝露を受けて咲くというけれど、夕方の光の中でこそ一層美しく咲き匂うものなのだなあ。 |
巻10-2274 作者未詳 |
読み下し文 臥いまろび恋ひは死ぬともいちしろく色には出でじ朝顔の花 |
現代語訳 転がりまわって苦しみ、恋い焦がれて死にそうになっても、目立つように表情に出したりはしません、露わに咲く桔梗の花のように。 |
巻10-2275 作者未詳 |
読み下し文 言に出でて言はばゆゆしみ朝顔のほには咲き出ぬ恋もするかも |
現代語訳 言葉に出して言ってしまえば恐れ多いので、桔梗の花のように表には出さず、秘めた恋をしていることでしょうか。 |
巻14-3502 作者未詳 |
読み下し文 我が目妻人は放くれど朝顔のとしさへこごと我は離るがへ |
現代語訳 私の愛しい妻を他人は引き離そうとするけれど、桔梗の花のように朝咲いて、年をとって小言を言われるようになろうとも、私が妻から離れられようか、いや離れはしない。 |


