万葉植物 あさ
麻の葉 麻の葉 麻の葉
基本情報
項目 | 内容 |
和歌中での植物名 | あさ |
和歌中での植物名表記 | 麻・安佐・朝 |
和名 | アサ・麻 |
分類 | アサ科アサ属 |
学名 | Cannabis sativa |
万葉集内登場回数(首) | 16 |
植物の特徴
麻はアサ科アサ属に分類される一年生草本植物です。茎は直立して成長し、非常に生育が早く、高いものでは数メートルにまで達します。葉は掌状に細かく裂けた独特の形(掌状複葉)をしており、葉の周囲には鋸歯(細かなギザギザ)が見られます。
雄株と雌株が分かれている雌雄異株の性質を持ち、夏季に緑色の小さな花を咲かせます。茎の皮層からは非常に強靭で耐久性に優れた繊維が採取できるため、古くから世界各地で衣料用繊維や縄・網などの原料として栽培・利用されてきました。また、種子は油分や栄養を豊富に含み、食用や薬用としても幅広く活用されてきた歴史を持っています。
文化史・解説
万葉集の時代において、麻は人々の暮らしと極めて深く結びついた基本的な衣料原料でした。木綿(コットン)が日本全国に普及する以前、日常生活で着用される衣類の大部分はアサの繊維から織られた「麻布」であり、庶民の日常着から防寒用の衾、神事・儀礼に用いられる木綿(ゆう)や麻苧(あさお)に至るまで、多岐にわたって利用されていました。
特に東国(現在の関東地方など)をはじめとする地域ではアサの栽培が盛んに行われており、アサを刈り取って干し、糸を紡いで布を織り上げる「麻績(おみ)」「機織り」は、当時の女性たちにとって非常に重要で身近な手業でした。万葉集の歌の中にも、庭でアサを干したり、糸を紡ぐ女性の姿が生活感豊かに描写されています。
また、アサは文学的・表現的にも重要な役割を果たしています。地名の「紀(き / 紀伊)」を導く枕詞「あさもよし」は、紀伊国がアサの産地であったことや「麻柄(麻の幹)」に由来するとされ、歌の調子を整える言葉として定着しています。さらに、山上憶良の「貧窮問答歌」に見られるように、粗末な「麻衾」や袖のない「布肩衣」は寒さや貧困に耐える庶民の生活象徴として歌われており、万葉時代の人々の哀歓や社会相を鮮明に映し出す文化的なアイコンとなっています。
万葉集における和歌と現代語訳
1番(巻2-155) 額田王 |
読み下し文 やすみししわご大君の恐きや御陵仕ふる山科の鏡の山に夜はも夜のことごと昼はも日のことごと哭のみを泣きつつありてやももしきの大宮人は行き別れなむ |
現代語訳 我が大君の恐れ多くも御陵をお世話する山科の鏡山で、夜は夜の間じゅう、昼は昼の間じゅう声をあげて泣いてばかりいて、宮廷に仕える人々は互いに別れ去ってしまうのだろうか。 |
2番(巻2-199) 柿本朝臣人麻呂 |
読み下し文 かけまくもゆゆしきかも〔一に云ふ、ゆゆしけれども〕言はまくもあやに恐き明日香の真神が原にひさかたの天つ御門を恐くも定めたまひて神さぶと岩隠りますやすみししわご大君のきこしめす背面の国の真木立つ不破山越えて高麗剣和射見が原の行宮に天降りいまして天の下治めたまひ〔一に云ふ、掃ひたまひて〕食す国を定めたまふと鶏が鳴く東の国の御軍士を召したまひてちはやぶる人を和せとまつろはぬ国を治めと〔一に云ふ、掃へと〕皇子ながら任したまへば大御身に大刀取り佩かし大御手に弓取り持たし御軍士をあどもひたまひ整ふる鼓の音は雷の声と聞くまで吹き響せる小角の音も〔一に云ふ、笛の音は〕敵見たる虎か吼ゆると諸人のおびゆるまでに〔一に云ふ、聞き惑ふまで〕捧げたる旗のなびきは冬ごもり春さり来れば野ごとにつきてある火の〔一に云ふ、冬ごもり春野焼く火の〕風のむた靡くがごとく取り持てる弓弭の騒きみ雪降る冬の林に〔一に云ふ、木綿の林〕飄かもい巻き渡ると思ふまで聞きの恐く〔一に云ふ、諸人の見惑ふまでに〕引き放つ矢の繁けく大雪の乱れて来れ〔一に云ふ、霰なすそちより来れば〕まつろはず立ち向かひしも露霜の消なば消ぬべく行く鳥の争ふはしに〔一に云ふ、朝霜の消なば消と言ふにうつせみと争ふはしに〕渡会の斎の宮ゆ神風にい吹き惑はし天雲を日の目も見せず常闇に覆ひたまひて定めてし瑞穂の国を神ながら太敷きましてやすみししわご大君の天の下申したまへば万代に然しもあらむと〔一に云ふ、かくもあらむと〕木綿花の栄ゆる時にわご大君皇子の御門を〔一に云ふ、さす竹の皇子の御門を〕神宮に装ひまつりて使はしし御門の人も白たへの麻衣着埴安の御門の原に茜さす日のことごと鹿じものい網伏しつつぬばたまの夕になれば大殿をふりさけ見つつ鶉なすい誇ひもとほり侍へど侍ひ得ねば春鳥のさまよひぬれば嘆きもいまだ過ぎぬに思ひもいまだ尽きねば言さへく百済の原ゆ神葬り葬りいませてあさもよし城上の宮を常宮と高くしまつりて神ながら鎮まりましぬ然れどもわご大君の万代と思ほしめして作らしし香具山の宮万代に過ぎむと思へや天のごとふりさけ見つつ玉だすきかけて思はむ恐くありとも |
現代語訳 心に思うのも畏れ多く、言葉にするのもあまりに恐ろしい明日香の真神の原に皇居を定められ、神としてお隠れになった大君(天武天皇)がお治めになった北方の国の不破山を越え、和射見が原の行宮にお降りになって天下を治め、国を定めようと東国の兵士をお召しになり、従わない者を治めよと皇子(高市皇子)にお任せになると、皇子は自ら大刀を佩き弓を持たれて軍士を率いられた。打ち鳴らす鼓の音は雷のようで、吹き響かせる角笛の音は虎が吼えるように人々が怯えるほどであり、掲げた旗のなびきは春の野火が風に従うかのごとく、執る弓弭の交差する音は冬の林に旋風が巻き起こるかと思うほど恐ろしく、引き放つ矢が乱れ飛ぶと敵は露霜のように消え去った。伊勢の斎宮から神風を吹き惑わして天下を整え、瑞穂の国をお治めになると、皇子の御門を神宮のように飾り立ててお仕えしていた宮人たちも、白たえの麻衣を着て、埴安の御門の原で日じゅう平伏し、夕方には大殿を仰ぎ見つつ鶉のように這い回り、離れがたく仕えていたが叶わず、春の鳥のようにさまよい、嘆きも思いも尽きないうちに神葬りされて城上の宮を常宮として鎮まられた。それでも万代にと作られた香具山の宮を天のように仰ぎ見つつ、玉だすきをかけて忍び敬い申し上げる。 |
3番(巻4-521) 常陸娘子 |
読み下し文 庭に立つ麻手刈り干し布さらす東女を忘れたまふな |
現代語訳 庭に生えているアサを刈って干し、その布を晒している東国の女である私を、どうかお忘れにならないでください。 |
4番(巻4-543) 笠朝臣金村 |
読み下し文 大君の行幸のまにまもののふの八十伴の男と出で行きし愛し夫は天飛ぶや軽の道より玉だすき畝傍を見つつあさもよし紀伊道に入り立ち真土山越ゆらむ君は黄葉の散り飛ぶ見つつにきびにしわれは思はず草枕旅をよろしと思ひつつ君はあらむとあそそにはかつは知れどもしかすがに黙もありえねばわが背子が行きのまにまに追はむとは千度思へどたわやめのわが身にしあれば道守の問はむ答へを言ひ遣らむすべを知らにと立ちてつまづく |
現代語訳 大君のお出ましにしたがって多くの武士たちとともに出て行った愛しい我が夫は、軽の道から畝傍山を見つつ、アサの産地である紀伊路に入り真土山を越えていることでしょう。散り飛ぶ黄葉を見ながら、慣れ親しんだ私のことなど思い出しもせず、旅をよいものだと思ってあなたはいらっしゃることだろうと心の中では分かってはいるものの、そうはいっても黙っていられないので、夫の行くままに後を追おうと千度も思いますが、弱々しい女の身であるため関守の問いにどう答えてよいかもわからず、立ちすくんでつまづいてしまいます。 |
5番(巻5-892) 山上臣憶良 |
読み下し文 風交じり雨降る夜の雨交じり雪降る夜はすべもなく寒くしあれば堅塩を取りつづしろひ糟湯酒うちすすろひてしはぶかひ鼻びしびしに然とあらぬひげ掻き撫でて我を除きて人はあらじと誇ろへど寒くしあれば麻衾引き被り布肩衣有りのことごと着襲へども寒き夜すらを我よりも貧しき人の父母は飢ゑ寒からむ妻子どもは乞ふ乞ふ泣くらむこの時はいかにしつつか汝が世は渡る天地は広しといへど吾がためは狭くやなりぬる日月は明かしといへど吾がためは照りや給はぬ人皆か吾のみや然るわくらばに人とはあるを人並に吾もなれるを綿もなき布肩衣の海松のごとわわけさがれるかかふのみ肩にうち掛け伏廬の曲廬の内に直土に藁解き敷きて父母は枕の方に妻子どもは足の方に囲み居て憂へ吟ひかまどには火気吹き立てず甑には蜘蛛の巣懸きて飯炊くことも忘れてぬえ鳥ののどよひ居るにいとのきて短き物を端切ると言へるがごとくしもと取る里長が声は寝屋処まで来立ち呼ばひぬかくばかりすべなきものか世の中の道 |
現代語訳 風まじりに雨が降り、雪交じりの降る夜は、どうしようもなく寒いので、固い塩をかじり酒糟湯をすすり、咳をし鼻をぐずぐずさせ、たいしたこともない髭を撫でて「自分ほどの男は他にいない」と威張ってみても寒さに耐えず、アサの掛け布団を引きかぶり、袖のない布衣服をすべて重ね着しても寒い。こんな夜に私よりも貧しい人の父母は飢え凍え、妻や子は泣いていることだろう。こんな時はどのようにして世を渡っているのか。天地は広いというが私には狭く、日月は明るいというが私には照ってくれない。私だけがこうなのか。たまたま人として生まれ人並みになっているのに、綿もない布肩衣は海藻のように破れ垂れ下がり、傾いた粗末な小屋の土間に藁を敷いて父母や妻子供と囲み居て嘆いている。竈には火気もなく飯を炊くことも忘れているのに、「ただでさえ短いものの端を切る」という言葉通りに、鞭を持った里長の声が寝床まで叫び立てる。世の中とはこれほどまでにすべのないものなのか。 |
6番(巻7-1195) 藤原卿 |
読み下し文 麻衣着ればなつかし紀伊の国の妹背の山に麻蒔く吾妹 |
現代語訳 アサの着物を着ると愛おしく思われます。紀伊の国の妹背山でアサの種を蒔いている愛しい我が妻のことが。 |
7番(巻7-1209) 作者未詳 |
読み下し文 人ならば母の愛子そあさもよし紀の川の辺の妹と背の山 |
現代語訳 もし人間であったなら、きっと母の愛しい子供であるでしょう。アサの産地である紀の川のほとりにある妹山と背山は。 |
8番(巻7-1265) 作者未詳 |
読み下し文 今年行く新島守が麻衣肩のまよひは誰か取り見む |
現代語訳 今年新しく島守として任地へ出かけて行く者のアサの衣の、肩のほつれは一体誰がお世話をして繕ってあげているのだろうか。 |
9番(巻7-1298) 柿本朝臣人麻呂之歌集 |
読み下し文 かにかくに人は言ふとも織り継がむわが機物の白き麻衣 |
現代語訳 人々が何やかやと言おうとも、私は織り続けましょう。自分の織り機で織る白いアサの着物を。 |
10番(巻9-1680) 後人 |
読み下し文 あさもよし紀伊へ行く君が真土山越ゆらむ今日そ雨な降りそね |
現代語訳 アサの産地である紀伊へと向かうあなたが真土山を越えているであろう今日よ、どうか雨よ降らないでおくれ。 |
11番(巻9-1800) 田辺福麻呂之歌集 |
読み下し文 小垣内の麻を引き干し妹なねが作り着せけむ白たへの紐をも解かず一重結ふ帯を三重結ひ苦しきに仕へ奉りて今だにも国に罷りて父母も妻をも見むと思ひつつ行きけむ君は鶏が鳴く東の国の恐きや神のみ坂に和たまの衣寒らにぬばたまの髪は乱れて国問へど国をも告らず家問へど家をも言はずますらをの行きのすすみにここに臥やせる |
現代語訳 垣根の中の畑のアサを引き抜いて干し、愛しい妻が作って着せてくれた白いアサの紐も解かずに、一重の帯を三重に結ぶほど激しく痩せて苦しいお役に仕え、「今度こそ故郷へ帰って父母や妻に会おう」と思いながら旅立ったあなたが、東国の恐ろしい神の坂で、衣は寒そうに乱れ、黒髪を乱して、国を尋ねても答えず家を尋ねても言わず、立派な男でありながら行き倒れてここに横たわっていらっしゃることよ。 |
12番(巻9-1807) 高橋連虫麻呂歌集 |
読み下し文 鶏が鳴く東の国に古にありけることと今までに絶えず言ひくる勝鹿の真間の手児名が麻衣に青衿着けひたさ麻を裳には織り着て髪だにも掻きは梳らず沓をだにはかず行けども錦綾の中に包める斎ひ児も妹にしかめや望月の足れる面わに花のごと笑みて立てれば夏虫の火に入るがごと湊入りに船漕ぐごとく行きかぐれ人の言ふ時いくばくも生けらじものを何すとか身をたな知りて波の音のさわく湊の奥つ城に妹が臥やせる遠き代にありけることを昨日しも見けむがごとも思ほゆるかも |
現代語訳 東国の昔からの言い伝えとして今に語り継がれる葛飾の真間の手児名は、粗末なアサの着物に青い襟を付け、そのままのアサの裾を履き、髪も梳かさず履物も履かずに歩いていても、綾錦を着た深窓の姫君よりも美しく、満月のように輝く笑顔で立つと、夏虫が火に飛び込むように男たちが群がった。手児名はそのために思い悩み、波の音の騒ぐ湊の墓の中に眠っている。遠い昔のことなのに、まるで昨日見たばかりのようにも思われることよ。 |
13番(巻13-3324) 作者未詳 |
読み下し文 かけまくもあやに恐し藤原の都しみみに人はしも満ちてあれども君はしも多くいませど行き向ふ年の緒長く仕へ来し君の御門を天のごと仰ぎて見つつ恐けど思ひ頼みていつしかも日足らしまして望月のたたはしけむと我が思へる皇子の命は春されば植槻が上の遠つ人松の下道ゆ登らして国見遊ばし九月のしぐれの秋は大殿の砌しみみに露負ひてなびける萩を玉だすきかけてしのはしみ雪降る冬の朝は刺し柳根張り梓を大御手に取らしたまひて遊ばしし我が大君を煙立つ春の日暮らしまそ鏡見れど飽かねば万代にかくしもがもと大船の頼める時に泣き言ふに目かも迷へる大殿をふりさけ見れば白たへに飾り奉りてうちひさす宮の舎人も〔一に云ふ、「は」〕たへのほの麻衣着れば夢かも現かもと曇り夜の迷へる間にあさもよし城上の道ゆつのさはふ磐余を見つつ神葬り葬り奉れば行く道のたづきを知らに思へども験をなみ嘆けども奥かをなみ大御袖行き触れし松を言問はぬ木にはあれどもあらたまの立つ月ごとに天の原ふりさけ見つつ玉だすきかけて偲はな恐かれども |
現代語訳 心に思うのも恐ろしい藤原の都に人は満ちあふれており、皇族方も多くいらっしゃるが、長年お仕えしてきた大君の宮門を仰ぎ見つつお慕い申し上げていた我が皇子の命は、春には国見をなさり、秋には萩を愛で、冬には弓を手に遊ばれた。万代にこうあってほしいと頼みに思っていた時に急に崩御され、大殿を見上げれば白い布で飾り立て、宮廷の舎人たちも白いアサの衣を着ているので夢か現実かと迷ううちに、城上の道を通って神葬り申し上げると、行く道のすべも知らず嘆いても甲斐がない。大君の袖が触れた松を、月が立つごとに仰ぎ見つつ忍び敬い申し上げよう。 |
14番(巻14-3454) 作者未詳 |
読み下し文 庭に立つ麻手小衾今夜だに夫寄しこせね麻手小衾 |
現代語訳 庭に生えているアサで織った小衾(肌掛け布団)よ、今夜だけでも夫を引き寄せておくれ、アサの小衾よ。 |
15番(巻14-3484) 作者未詳 |
読み下し文 麻苧らを麻笥にふすさに績まずとも明日着せさめやいざせ小床に |
現代語訳 アサの糸を麻桶にいっぱい紡ぎ溜めなくても、明日着せるわけでもあるまいに。さあ、夜の床に入りましょう。 |
16番(巻16-3791) 作者未詳 |
読み下し文 みどり子の若子が身にはたらちし母に懐かえ襁の平生が身には木綿肩衣純裏に縫ひ着頚着の童児が身にはゆひ幡の袖着衣着し我をにほひよる子らがよちには蜷の腸か黒し髪をま櫛もちここにかき垂れ取り束ね上げても巻きみ解き乱り童児になしみさ丹つかふ色なつかしき紫の大綾の衣住吉の遠里小野のま榛もちにほしし衣に高麗錦紐に縫ひ付け指さふ重なふなみ重ね着打麻やし麻績の子らあり衣の宝の子らがうつたへは経て織る布日さらしの麻手作りを信巾裳なす脛裳に取らし支屋に経る稲置娘子が妻問ふと我におこせし彼方の二綾下沓飛ぶ鳥の明日香壮士が長雨忌み縫ひし黒沓さし履きて庭にたたずみ退けな立ち障ふる娘子がほの聞きて我におこせし水縹の絹の帯を引帯なす韓帯に取らし海神の殿の甍に飛び翔るすがるのごとき腰細に取りよそほひまそ鏡取り並め掛けて己が顔かへらひ見つつ春さりて野辺を巡ればおもしろみ我を思へかさ野つ鳥来鳴き翔らふ秋さりて山辺を行けばなつかしと我を思へか天雲も行きたなびけるかへり立ち道を来ればうちひさす宮女さすたけの舎人壮士も忍ぶらひかへらひ見つつ誰が子そとや思はえてあるかくのごと為らえし故し古ささきし我やはしきやし今日やも児らにいさにとや思はえてあるかくのごと為らえし故し古の賢しき人も後の世の鑑にせむと老人を送りし車持ち帰り来し持ち帰り来し |
現代語訳 幼少期はおしめを着て母のふところに抱かれ、少年期には木綿の着物を着て、さらに成長すると紫の大綾の衣や錦の紐を付け、アサを紡ぐ娘や稲置の娘などに愛され想いを寄せられた私であったが、月日が流れて今や年老いて車に乗せられて帰っていく。その姿を「後の世の鑑とせよ」と昔の賢者も言ったように、私は送られて帰っていくのだ。 |


