万葉植物 秋の香
松茸 松茸
基本情報
項目 | 内容 |
和歌中での植物名 | あきのか |
和歌中での植物名表記 | 秋の香 |
和名 | マツタケ・松茸 |
分類 | キシメジ科キシメジ属 |
学名 | Tricholoma matsutake |
万葉集内登場回数 | 1 |
植物の特徴
松茸は、キシメジ科キシメジ属に分類される大型の担子菌類(キノコ)です。主に赤松などのハリモミ属やマツ属の生きた樹木の根に外生菌根を形成して共生し、秋の9月から10月頃にかけて発生します。成長の初期段階では柄の上に半球形のカサをかぶっていますが、次第にカサが開いて平らな笠状へと変化します。表面は茶褐色で繊維状の鱗片に覆われており、ひだは白色を呈しています。特有の強い芳香成分(オクテノールやケイヒ酸メチルなど)を持ち、古来より日本の秋を代表する味覚として珍重されています。
文化史・解説
万葉集における「秋の香」と松茸
万葉集の中で松茸が歌に詠まれているのは、巻10の1首のみです。歌中では直接的に「松茸」と呼ぶのではなく、「秋の香(あきのか)」という非常に風流な名称で表現されています。赤松が立ち並ぶ山肌一面に、カサを広げた松茸が所狭しと生え出ている様子と、山全体に漂う豊かな香りを喜ぶ万葉人の素朴で瑞々しい感動が詠み込まれています。
日本の食文化における松茸の歴史
古代日本において松茸は、秋の訪れを五感で知らせる特別な存在でした。平安時代以降の王朝文学や年中行事の記録にも頻繁に登場し、貴族たちの秋の行楽(松茸狩り)や贈答品として重宝されてきました。里山における柴刈りや薪炭利用などの人間活動によって赤松林の環境が良好に維持されてきた歴史的背景もあり、日本の伝統的な食文化や季節感を象徴する大切な植物資源として深く親しまれています。
万葉集における和歌と現代語訳
1番(巻10-2233)作者未詳 |
読み下し文 高松のこの峰も狭に笠立てて満ち盛りたる秋の香の良さ |
現代語訳 松の立つこの峰も狭いと思えるほど、一面に笠を広げて生え盛り、満ち満ちているマツタケの何と素晴らしい香りでしょうか。 |


